結論から言えば、朝ドラ「ばけばけ」の初回、薄暗い部屋で怪談「耳なし芳一」を語り聞かせたトキに、ヘブンが言ったあの言葉です。
「スバラシイ ノ ハナシ…ママサン アリガトウ ノ ココロ アリマス。」
へるんさん言葉はどうして生まれ、どのように使われたのでしょうか。そして「へるんさん言葉」が果たした働きとは?
へるんさん言葉(ヘルンさん言葉)
小泉セツは、ラフカディオ・ハーンの家に住み込みの女中として入りました。
日本語があまりわからないハーンと、英語がわからないセツでしたが、心が通い始めコミュニケーションはなんとかとれるようになっていきました。しかし、なかなか複雑な会話になると通訳を頼まなければなりませんでした。
ハーンはそれでもセツから日本の伝説や怪談、神話などを聞きたがりました。やがて二人はお互いだけに通じる言葉を使うようになっていきます。これをセツは「へるんさん言葉」と言っていましたが、二人の間に生まれた子ども達でさえわからないこともあったようですから、言葉だけでなく感情や、表情、前後の脈絡なども読み取ることができるハーンとセツの「二人のための言葉」だったのではないかと思います。
なぜ「へるんさん」?
ハーンのスペルが「Hearn」であることによって生じた「書き間違い」だったそうです。松江に英語教師として赴任した時に渡された辞令に「ラフカヂオ・ヘルン」と書かれていたのです。ハーンはこの間違いを気に入り、書き直さなくて良いと言いました。そして、面白がって「へるん」と書いたハンコまで作ったのだとか。
へるんさん言葉はどんな言葉?
へるんさん言葉は、日本語の単語や慣用句を繋ぐため、助詞(て、に、を、は)が省かれ、動詞や形容詞は変化させず用いられた上に、語順が英語の並びだったり日本語の並びだったり不規則なものでした。
例文
例へば「テンキコトバナイ」といへば「天気は申し分なくよろしい」といふ意味です。それから、例へば「巖は遊んでばかりゐるから悪い。これから少しの間勉強する方がよい。」といふ意味を表すには「イハホ、タダアソブ トアソブ。ナンボ ワルキ、デス。スコシトキ ベンキョ シマセウ ヨキ。」 (稲垣巖「父八雲を語る」より)
というように言われたようです。ハーンがセツに出した手紙には「小・ママ・アナタ・ノ・カワイ・テガミ・アリマス・ワタシ・ヨロコブ・テンキ・ハ・キレイ・ト・ススシイ・デス」と書かれています。
セツもまた「へるんさん言葉」を真似て使っていたようです。「ばけばけ」初回での「わたしにもっと学があれば…うらめしいの顔ですけん」と言ったのがそれでしょう。
「ママサン。コレ、誰ノオ陰デ生マレマシタノ本デスカ?」「ウラメシイノコト ナイ。ナンボウ良キママサン。世界デ1番ノママサンデス」
このシーン、二人の仲睦まじい様子が伝わってきて、「ばけばけ」というドラマを見るのが楽しみになりませんでしたか?私はキュンキュンでした!
会話を大切にしたハーンとセツ
ハーンは日本語の読み書きを完璧にすることは早々に諦めたそうです。それよりもハーンにとって大切だったのは、愛する人と作り上げていく「ふたりのための言葉」だったのではないでしょうか。それは片言でしか話せなかった幼少期に失った母親ローザとの会話を取り戻すような想いもあったかもしれません。そしてハーンは「へるんさん言葉」で通じるセツとの会話とそれによって生まれるコミュニケーションの温かさを愛したのだと思えてなりません。
いかがでしたでしょうか。へるんさん言葉は「ばけばけ」ファンの間で流行る…かもしれませんね…?!


